先日、講義の中でオランダの話を聞かされて以来、オランダへ行きたいという思いが強まっている。
今まで、海外に行きたいとは思ったことがなかった。行く理由が見当たらなかったからだ。パスポートとか、面倒だし・・・。向こうで命を落とさないとも限らない。まぁ、そんなことは滅多にないのだろうが、身辺をまったく知らないという環境に身の危険を感じることは確かだ。ともあれ、死ぬ直前には白い米と味噌汁が食べたい。
そんな私が、オランダへ行きたくなった。ネーデルラントとは、オランダとその周辺地域を指す用語で、「低地の国々」という意味だそうだが、タイトルをネーデルラントとしたのは、なんとなく語呂がいいという理由だけだ。
私は一度も海外に行ったことがない。周りの友人たちからはしきりに、海外旅行をすすめられたり、誘われたりする。その度に、「日本もまだまだ捨てたもんじゃねぇよ」とか、「お金がなくって」などとはぐらかしてきた。実は面倒なだけなのだが。そんな私に、これは進歩の兆しか・・・!
オランダか、とふっと考える。そういえば私自身にとって、オランダという国はなぜか、幼いころから身近だった気がする。長崎にある、オランダを演出したテーマパーク「ハウステンボス」に、小さい頃よく連れて行ってもらったのだ。咲きほこるチューリップ、ゆっくり回る風車、運河のクルージング、そしておいしいチーズ(の試食)・・・もちろん、オランダに行けばその光景がそのままあるわけではない、ということくらい分かっている。それに、実際に聞かせてもらったオランダの話は、もっともっと魅力的だった。ワークシェアリングが非常にうまくいっていること、気温が30℃越えたら大学の授業が休講になること、学生はとても安い料金で国内の鉄道を乗り回せること、などなど。とにかく、日本よりも居心地が良さそうだ、と思っただけのことだ。
それはそうと、オランダという国は日本とつながりが深い。周知のように、鎖国中の日本と貿易をしていたヨーロッパ唯一の国なのだ。その関係かは知らないが、ライデン大学では日本の研究が特に盛んだそうである。かと言って、オランダ国中の人々がみんな、日本に理解があるというわけではないが。
ここで多少、自分の専門に話を引き付けると、オランダは、モダニズムの潮流において非常に重要な位置を占める芸術運動「デ・ステイル」発祥の地である。ドゥースブルフ、モンドリアン、そしてリートフェルトなど、巨匠たちが星の如く出た。水平と垂直、赤青黄の美学・・・それはまさしく、機会の時代、産業の時代の美学をもっとも先端的に表現したものだったろう。デ・ステイルが、ある時期以降のバウハウスの活動方針を決定づけたのは有名だ。
オランダの国土は、ほとんどがポルダーと呼ばれる干拓地だそうだ。まさに、自分たちで国をつくりあげてきたのだ。国「家」ではなく、国「土」を。人工の大地(と言っても、日本の埋め立て地のような味気ないものではないし、もっと歴史のあるものだが)の上で暮らす彼らは、どんな気持ちだろうか。
以上、オランダについての断章のようなかたちになった。